電気通信大学 渡辺信一(原子.分子.光科学)研究室

研究内容

研究内容

低温原子の結合による低温分子の生成

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2個の極低温原子による Fano-Feshbach 分子の生成

 レーザー冷却および蒸発冷却の技術を駆使して運動エネルギーがほぼ零の極低温原子集団を準備できるようになった。磁場を掃引する(左図)ことで、2個の極低温原子のエネルギーが、2原子分子の準束縛状態(Fano-Feshbach 分子)のエネルギーと等しくなるようにできる(右図)。さらに掃引を続けると、有限の確率で分子状態が生成される。どれだけの原子対が分子を形成するかを理論的に求めることは意義深い。生成された分子のコヒーレンスを利用した干渉実験も行われた。極低温原子によるFano-Feshbach 分子生成は、基底状態の極低温分子生成のために極めて重要なステップである。

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光格子の振幅変調による低温原子波束の生成

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 光格子の振幅を周期的に変えることで、極低温冷却原子ガスの励起および脱励起を制御できる。振幅変調はスカラー的に作用することから、擬運動量が保存する。基底状態を初期状態とするとき、変調周波数を適切に選ぶと基底バンドのq=0の状態に左図のようなホールが発現し、位相整合によって周期的に再構成される(右図は概念を示す)。生成されたホールのダイナミクスは半古典的なモデルにより定性的に説明できるが、その現象の根本的な理解には時間に依存するシュレディンガー方程式を解く必要がある。我々は数値計算を行い、ドイツで行われた実験結果[1]を分析した。計測されたコーヒレント時間よりもはるかに長い30ミリ秒の間ホールの状態が維持されることを確認した。

  [1]J. Heinze et. al., Phys. Rev. Lett. 110, 085302 (2013)

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分子動力学

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生理食塩水(NaCl食塩水、濃度0.15mol/L)中にある、
とあるタンパク質の一部の構造を決定するためにエネルギー最小化を行なって得た図
(水分子は非表示)

 主に、卒業研究生を対象として、分子動力学法を用いた高分子の研究を開始した。これは、数十から数十万個におよぶ原子が互いに相互作用することによって、どのような機能を発現するかを数値計算によって研究する手法である。従って、タンパク質のような高度な機能を持つ高分子もその対象である。

 この研究は、これまで渡辺研で培ってきた計算技術の延長上に捉えることができる。ただし、シュレーディンガー方程式に対して、MDの基本方程式はニュートンの運動方程式である。原子同士に作用する力(力場)はすでに量子力学的に理解されている。これを使えば、例えば「水中にあ るタンパク質はどの様に変形するのか」とか「タンパク質どうしはどのようにドッキングするのか」などといった問題を可視化して吟味することが出来る。

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光格子

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2次元光格子に閉じ込められた冷却原子(イメージ図)

 光格子とは、対向するレーザー光で格子状の定常波を作ったものである。原子の双極子が誘起されると、光格子によって原子を束縛したり制御したりできる。光格子には格子欠損がないことや波長変調で格子定数を変化できることなどから応用性に優れている。レーザー光のパラメーターを変えることで様々な物理現象をシミュレーションすることができる。

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極低温原子

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極低温冷却原子になる前後の状態(イメージ図)

 極冷却原子とはその温度が絶対零度近くまで冷却された原子である。極低温原子を生成するために使われている技術は、まずレーザー冷却である。例えば、磁場中で熱運動をしている原子気体(左図)に対向するレーザー光を照射すると、平均的には運動方向と反対向きに光圧を受けるようになる。このようにして、原子の平均速度を減少させる技術である。このレーザー冷却に加えて蒸発冷却(お湯から気化熱を奪うことで冷ます方法に類似)を用いると、すべての原子が基底状態を占有するボース・アインシュタイン凝縮(右図)という特殊な状態を作ることができる。この状態は有用な高いコヒーレンスを持っている。

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