He 原子の2電子励起状態における量子カオス



クーロン3体系である He 原子は古典的にはカオスであり, 量子力学的エネルギー準位や波動関数の振る舞いは,量子カオスの 観点から興味がもたれています.Heの2電子励起状態 のエネルギー準位を超球座標法によって高精度計算を行い, 最近接準位統計(NNS)を分析しました. エネルギーが低い場合には NNS は非カオスであるポアソン分布 を示し,2電子の主量子数が共に20 以上 になる超高励起状態では,NNS がウィグナー分布になり, カオス的な振る舞いをすることを厳密計算により始めて 明らかにしました.


He原子の2電子の主量子数のうち小さい方が16から19までの状態の 最近接準位統計.赤線はポアソン分布,青線はウィグナー分布.


発表論文

“Signature of chaos in high-lying doubly excited states of helium atom”
A.T. Le, T. Morishita, X.-M. Tong, and C.D. Lin,
Phys. Rev. A 72, 032511 (2005) (14 pages).



Toru Morishita, UEC